古いアパートに暮らす売れない作家が、壁の穴を通して隣の部屋を覗き見たことから、夢ともうつつともつかない妖しい世界に取り込まれていく姿を、昭和モダンテイスト溢れるノスタルジックなタッチでユーモラスかつ官能的に綴る幻想奇譚。
ひとりの男が小説を書いている。名前は真木栗勉(ルビ:まきぐり べん)。売れない小説家だ。古い木造アパートで小説を書いている。そんな彼に、官能小説の依頼が舞い込むが、書けるはずもなく時間だけが過ぎていく。そんな時、部屋の壁に小さな「穴」を見つける。そして穴の発見にあわせるように、白い日傘をさした女が引っ越して来た。これが、夢とも現実ともつかない幻想の始まりとなった。真木栗は、その穴からのぞき見たことを小説に書き始め、知らないうちに女の虜になっていくのだった…。